一針に願いを込めて。フェルトで作る『ひな祭りの吊るし飾り』制作ガイド

公開日: 2026/04/01

フェルトで作られた色鮮やかなひな祭りの吊るし飾り

「雛人形を出すのは大変だけど、季節の行事は大切にしたい」。そんな現代の住まいに寄り添うのがハンドメイドの良さです。

江戸時代から伝わる伊豆・稲取の『吊るし雛』。元々は高価な雛人形を買えない庶民が、ハギレを持ち寄って子供の幸せを願って作ったのが始まりと言われています。その「想い」はそのままに、現代の住空間に合う「フェルト」という扱いやすい素材で、あなたの手で物語を紡いでみませんか?

本記事では、「針と糸だけでできるモチーフ作り」から、100均素材を安っぽく見せない配色の黄金比までを、約2,000文字のボリュームで詳述します。

1. モチーフの意味:知れば深く、愛おしくなる「願い」

吊るし飾りのひとつひとつのパーツには、健やかな成長への祈りが込められています。

  • 桃(もも): 邪気を払い、延命長寿を願う。女の子の優しさを象徴する中心的なモチーフです。
  • 橘(たちばな): 「常世の国の花」とされ、不老不死、不老長生を願います。
  • 這い子人形(はいこ): 赤ちゃんが健やかに這い這いし、早く立ち上がれるように。子宝・安産の願いも。
  • 巾着(きんちゃく): お金に困らないように。また、将来お嫁に行くときの嫁入り道具の一つとして。

2. フェルトの特性を活かした「ふっくら」仕上げのコツ

フェルトは端の処理が不要なため、初心者には最高の素材ですが、単調になりがち。

ブランケットステッチの統一

フチを縫う「ブランケットステッチ」の幅を揃えるだけで一気に「既製品感」が出ます。刺繍糸をあえて濃い色にすると輪郭が強調され、ポップで可愛い印象に。

「中綿」の入れ過ぎ注意

パンパンに詰めすぎると縫い目が広がり、不格好になります。8分目くらいに抑え、形を押しつぶしながら馴染ませると、上品な厚みが生まれます。

3. 現代インテリアに馴染む「ダスティカラー」の提案

伝統的な赤・黄・緑をそのまま使うと、浮いてしまうことがあります。

  • ✨ ピンク → スモーキーピンク: 少しグレーがかったピンクを選ぶと、北欧風やモダンなインテリアにもしっくり馴染みます。
  • ✨ グリーン → オリーブ・モスグリーン: 原色の緑は主張が強すぎます。落ち着いた深みのある緑で、桃や橘の色を引き立てましょう。
  • ✨ 土台(輪掛け)へのこだわり: 100均の竹製刺繍枠を土台にし、麻紐で吊るすスタイルに。これだけで「和洋折衷」の洗練された雰囲気に仕上がります。

4. 注意!「重心バランス」と「紐の固定」

「吊るし飾りの最大の失敗は、飾った後に『傾いてしまう』こと。『一番下に重り(ビーズなど)を入れる』『各段のモチーフの重さを左右対称に合わせる』ことが重要です。 特にフェルトは軽いので、空気の流れでくるくる回ってしまいます。紐との接点に少量のボンドを付けて位置を固定する一手間で、美しい静止したレイアウトを保てます。」

まとめ:一針一針が、未来への「ラブレター」

「これはね、あなたが元気に育つようにって作ったのよ」。

いつか成長したお子様に、そんな風に語りかける日を想像してみてください。

フェルトを切る音。一目ずつ進む針。 その静かな時間には、誰にも邪魔されない豊かな「愛」が宿っています。 今年の桃の節句、世界でたった一つの「願い」を吊るして、春の訪れを祝ってみませんか?

さあ、フェルトを手にとりましょう。あなたの優しい想いが、形になるのを待っています。